展示団体紹介 ~文芸部[時をかける文芸部]~ 其の三

え? こいつ先生なの?


第三走者 嘉村進次郎


ムトウは階段前までたどりつくと、上の階まで行っても逃げ場がないことを思い出した。学校の構造上、上の階まで行ったとしても、鍵の掛かった屋上の扉までしか行けないのだ。屋上までいかずに途中の階を走ったとしても、またここに戻ってくるはめになる。あれが本当にハチマ先生なら、元々陸上選手だったらしい先生の方が速いだろう。そんな無駄な動きをすれば、たちまち追いつかれてしまう。

ここまで考えて、ムトウは階段を通り過ぎて体育館までまっすぐ走っていった。体育館は色々な校舎につながっており、逃げ場が多いと思ったからだ。

アサダにもこのことを伝えようとしたが、行き先がハチマにばれると思って、声は出せなかった。途中吹きさらしになっている通路を抜けたため雨に濡れてしまったが、気にする余裕もなかった。

「はあ、はあ、ここまで来れば、大丈夫だろ」ムトウはアサダに向けてこう言ったが、その言葉を受け止めるべき人物は、既に後ろにいなかった。走っているあいだに、はぐれてしまったのだ。

「うわあああ」どこかから叫び声が聞こえ、それとともにまた、雷鳴がとどろいた。叫び声は、雨と雷の音にかき消されて、すぐに消えてしまった。どこから聞こえたのかも、分からない。

時計は、9:00をさしている。

タイトルとURLをコピーしました